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3Dパースで内装を比較する:素材・照明の条件を揃えるA案・B案検証

公開日

3DパースでA案・B案を比べるときは、カメラ位置、目線高さ、画角、家具、時間帯、出力サイズを固定し、素材や照明など一つの変数だけを変えます。見つかった差は「好み」で終わらせず、どの視点で何が変わったかを記録し、仕上表、照明資料、実物サンプルへ戻す。これが3Dパース比較を設計判断にする基本です。

導入:

打合せに二枚のパースを並べたとき、A案のほうが明るく、広く、整って見える。ところが、よく見るとA案だけ窓側から撮り、画角も広い。B案は夜の設定で、家具の影が強く出ています。これでは素材の違いを比べたつもりでも、実際には撮り方と光の違いを見ています。

内装提案では、この混線が起こりやすい。壁紙、床、収納扉、照明を少しずつ触るうちに、どの変更が印象を変えたのか追えなくなるからです。完成パースとしてはきれいでも、比較資料としては弱い。私が3Dパースを比較に使うときは、最初に「動かさない条件」を決めます。

本稿では、前の記事で家具配置を確定したLDKを基準にします。壁、開口、家具の寸法と位置は固定したまま、大面積の素材、収納面の視覚情報量、昼夜の照明という三つを順番に検証します。Coohomの操作画面を使いますが、中心にあるのは特定ソフトの使い方ではありません。同じ条件をつくり、一つだけ変え、結果を現実の仕様へ戻す。その方法です。

1.「落ち着く」を、比較できる場面へ置き換える

「明るくて落ち着くLDKにしたい」という要望は、そのままでは3Dへ入力できません。明るいとは昼の窓辺なのか、夜の食卓なのか。落ち着くとは色数が少ないことか、光源が目に入りにくいことか。言葉を急いでスタイル名へ変換すると、判断の根拠が薄くなります。

そこで、私は先に時間と行為を置きます。今回のLDKでは、朝に入口からキッチンまで歩く場面、日中にダイニングで作業する場面、夜にソファで過ごす場面の三つです。各場面で見る項目も短く決めます。

·  朝:入口から窓までの明暗差が強すぎないか

·  日中:テーブル面とモニター周辺に反射が出ていないか

·  夜:ソファ視点で光源が直接入り、壁面の情報が騒がしく見えないか

心地よさを数値で自動判定するわけではありません。ただ、どの場面で何を見るかが決まると、「Aのほうが好き」の先へ進めます。素材を変えた結果なのか、収納面の見え方なのか、照明の影響なのか。曖昧だった感覚を、議論できる単位へ分けられます。

2.先に固定/変動要素をつくる

比較の基準モデルには、CADまたはBIMで確定した壁、開口、天井高を使います。家具は前稿の検証結果を引き継ぎ、サイズ、向き、位置をロックします。実商品が未決定でも、同じ代理モデルを両案で使えば、内装比較の途中で家具の体量が変わることはありません。 

基準となるLDKモデル

図1 基準となるLDKモデル。本稿では壁・開口と家具の寸法・位置を固定し、内装条件だけを比較する。画面のインチ表示は利用環境の例であり、案件の正本寸法はCAD/BIM側で管理する。

今回の固定要素は、室形状、開口、家具、カメラ位置、目線高さ、視野角、出力比率です。変動要素は一回につき一項目。素材比較なら素材だけ、照明比較なら照明条件だけを動かします。さらに、A案とB案のファイル名にも変数を入れます。「A案_明るい」ではなく、「M01_床マットオーク」「L02_夜_間接照明追加」のように、何を変えたかが後から追える名前にします。

Coohomでは3D表示の視点を保存し、同じ位置へ戻れます。レンダリング画面ではカメラの高さ、向き、視野角を調整できるため、入口、ソファ、ダイニングの三視点を先に保存します。画角を「きれいに見えるところ」へ毎回微調整しない。ここが条件を制御した比較では重要です。

ツールの選択も、比較条件をどこで管理するかで変わります。SketchUpとEnscapeの組み合わせは、造作形状を細かく作り込み、設計モデルの変更を追いながらリアルタイムに確認したい場面と相性がよい。Twinmotionには、同じシーンの表示や照明条件をView setsとして分け、画像やパノラマへ適用する方法があります。Coohomは、住宅モデル上で素材の置換、保存視点、照明設定、静止画やパノラマまでを近い操作環境で往復したいときに使いやすい。どのツールでも、比較条件を人が固定しなければ、結果は公平になりません。

3.実験1|大面積の素材は、色より反射と面のつながりを見る

小さなサンプルでは穏やかに見えた床材が、LDK全体へ広がると光を強く返すことがあります。壁も同じです。白に近い二つのクロスでも、光沢、凹凸、テクスチャの縮尺が違えば、窓際と部屋奥の明暗差は変わります。

最初の比較では、床だけを変えます。壁、天井、家具、照明、カメラは固定。A案には明るいマット系、B案には少し濃い木質系を入れ、入口とソファの同じ視点から出力します。床と壁を同時に変えると、どちらが反射を変えたのか分からないため、二回に分けます。

Coohomのマテリアル変更では、対象部分を選んで素材を置き換え、位置やズームを調整できます。ここで見落としやすいのがテクスチャの実寸感です。木目のピッチやタイル目地が現実と合っていなければ、色が近くても面の情報量は別物になります。比較前に貼り方向と縮尺をそろえます。 

床・壁・天井の素材候補を並べる操作例

図2 床・壁・天井の素材候補を並べる操作例。ここでは候補の違いを読むための予備比較であり、最終判断では固定した家具と同一カメラを戻して再出力する。

画面上で確認するのは、単純な明るさだけではありません。窓際の白飛び、床の反射、家具と床の境界、部屋奥の沈み方を見る。素材Aで空間が軽く見えても、ダイニング天板やテレビ画面への反射が強まるなら、その代償も記録します。素材Bで反射が落ち着いても、部屋奥の明度差が大きくなれば、照明側の検討が必要です。

この段階で「画面に近い色」を発注色にはしません。モニター、レンダリング設定、テクスチャデータの作り方で色と光沢は変わります。3Dで絞るのは、面積配分、反射傾向、ほかの面との組み合わせ。候補を二つ程度へ絞ったら、大判サンプルを現地の昼光と夜間照明で見ます。

4.実験2|収納は容量を変えず、表面の情報量だけを比べる

次に扱うのは、収納壁面の見え方です。ここで収納量やキャビネット寸法まで変えると、前稿の家具配置や造作設計の話へ戻ってしまいます。本稿では収納の外形と容量を固定し、扉面とオープン部の割合だけを変えます。

A案は扉面を連続させ、日用品を隠す。B案は同じキャビネットの一部をオープンにし、本や器を見せる。置く小物も同じ数に固定します。オープン棚を増やした案だけ植物やアートを足せば、扉と棚の差ではなく装飾量の差になるからです。

入口視点では、収納が大きな一枚の面として迫ってこないか。ソファ視点では、棚の線や小物が長時間視界に残りすぎないか。ダイニング視点では、食事や作業の背景として情報が多すぎないかを見ます。入室時には整って見えても、座るとオープン棚が真正面に来ることがあります。反対に、全面扉にすると静かになる一方、面の大きさや反射が強く見える場合もある。 

固定した着座視点

図3 固定した着座視点から、テレビ面・収納面と手前の装飾がどう重なるかを確認する操作例。

この比較の目的は、「隠すほうが正解」と決めることではありません。どの生活用品を見せ、どの面を静かに残すかを、同じ視点から説明できるようにすることです。採用案が決まったら、扉/オープン棚の比率と面材候補を仕上表へ戻します。キャビネットの納まり、金物、開閉、製作条件は造作図とメーカー資料で別に確認します。

5.実験3|昼と夜は、同じ素材の見え方を分けて確認する

素材と収納面が絞れたら、最後に照明条件を変えます。昼案と夜案で家具や素材まで変えない。昼は自然光と必要な補助光、夜はベース、タスク、アクセントの使用場面を設定し、同じ入口・ダイニング・ソファ視点を出力します。

Coohomの公式ヘルプでは、プリセットとカスタムの照明テンプレート、太陽光のオン/オフや角度、補助光源の追加が案内されています。テンプレートは初期状態を作るには便利ですが、A案とB案で別のテンプレートを選ぶだけでは、内部で何が変わったか追いにくい。比較用には、基準となる照明状態を複製し、変更した光源と設定を記録します。

照明条件を切り替え、同じ視点で見え方を比較する操作例

 図4 照明条件を切り替え、同じ視点で見え方を比較する操作例。テンプレート名だけで判断せず、変えた光源・明るさ・太陽光条件を記録する。

昼の入口視点では、窓側だけが明るく、部屋奥が沈みすぎていないかを見る。日中のダイニングでは、天板やモニターへ反射が出ていないか。夜のソファでは、ダウンライトやペンダントが直接目に入り続けないか、テレビや光沢面に強い映り込みがないか、壁面の一部だけが白く浮いていないかを確認します。

ここで得られるのは、視覚上の発見です。レンダリングが明るく見えても、必要照度、均斉度、グレア、昼光性能が成立した証明にはなりません。器具配光、光束、色温度、演色性、制御方法は照明資料へ戻し、必要な性能検討を行います。3Dは「どこを疑うか」を見つける道具であり、照明計算の代わりではありません。

6. 360°パノラマは、比較の勝敗ではなく死角確認に使う

三つの固定パースで案を比べた後、必要な箇所だけ360°パノラマで見直します。ここで別の出力形式を増やして提案を豪華にすることが目的ではありません。一枚のパースの背後や側面に、比較条件から漏れた問題がないかを確認します。

360°パノラマ

 図5 360°パノラマを保存し、日常の滞在位置から周囲を見回す操作例。固定パースでは画面外だった収納側面、家具背面、光源の位置を確認する。

ソファ位置から振り返ると、パースには入っていなかった収納側面が強く見える。ダイニングから見ると、夜間の光源が視界に入る。入口からは静かだった壁面が、キッチン側からは情報過多に見える。こうした発見があれば、比較表へ戻して「どの視点で条件が崩れたか」を追記します。

パノラマやVRは、画角を自由に変えられる分、A/Bを厳密に並べるには向かない場面もあります。公平な比較は固定パースで行い、全周確認は死角を探す。役割を分けると、出力形式が増えても判断が散りません。

7.最後は、仕上表・照明資料・サンプルへ戻す

3D上でA案を採用しても、その時点で材料と照明が確定したわけではありません。素材名、品番、貼り方向、目地、見切り、ロット、照明器具、調光条件を正本へ戻して、初めて設計情報になります。

今回の流れを短く残すと、次のようになります。

·  Input:CAD/BIMの確定形状、前稿で確定した家具、三つの固定視点

·  Action:大面積素材、収納面、昼夜照明を一回につき一項目だけ変更

·  Finding:入口、ダイニング、ソファのどこで反射・情報量・眩しさが変わったか

·  Comparison:A/Bで動かした条件と、変わらなかった条件を併記

·  Change:採用案と、見送った案に残った負担を記録

·  Return:仕上表、照明資料、サンプル一覧、確認記録へ反映

·  Boundary:色・触感は実物、照明性能は計算と仕様、施工条件は図面と現場で再確認

私は比較資料に、採用理由だけでなく見送った理由も一行残します。「床Bは落ち着いて見えるが、夜の部屋奥が沈む」「全面扉は静かだが、入口正面で面が大きく見える」といった記録です。後から素材や器具が廃番になったときも、何を守って代替品を選ぶべきか追いやすくなります。

まとめ|きれいな二枚より、条件のそろった二枚をつくる

3Dパース比較で必要なのは、A案とB案を同じ土俵へ置くことです。家具、カメラ、画角、時間、出力条件を固定し、大面積素材、収納面、照明を一つずつ変える。固定パースで差を読み、パノラマで死角を確認し、判断を仕上表、照明資料、実物サンプルへ戻します。

Coohomは、住宅モデル上で素材を置き換え、視点を保存し、照明条件を切り替え、レンダリングとパノラマへ進む流れをまとめやすい選択肢です。SketchUp+EnscapeやTwinmotionでも、同じ比較プロトコルは使えます。重要なのはソフト名より、何を固定し、何だけを変え、どこへ戻したかが残っていることです。

心地よさそのものを3Dが決めるわけではありません。ただ、「なぜこちらの案が落ち着いて見えるのか」「夜になると何が気になるのか」を同じ条件で話せるようになる。感性を消すのではなく、感性に検討可能な足場を与える。それがこのページで扱う3Dパース比較です。

次のアクション

進行中のLDKから、入口か長く座る場所の視点を一つ保存してください。家具と照明を固定し、床材だけを二案へ分けます。同じ画角と出力サイズで並べ、反射、部屋奥の明暗、家具との境界を一行ずつ記録する。最後に二つの大判サンプルを同じ場所で確認します。変数を一つに絞れば、最初の比較だけでも判断の癖が見えてきます。

よくある質問

Q1. A案・B案では、何をどこまで同じにすべきですか?

少なくとも室形状、家具、カメラ位置、目線高さ、視野角、時間帯、照明、出力比率を固定します。素材比較なら素材以外を動かさず、照明比較なら素材を固定します。後処理や露出を変えた場合も、Changed Variableとして明記します。

Q2.素材案は何案まで比較すればよいですか?

探索段階では複数案を見ても構いませんが、意思決定用の資料は二案、必要でも三案程度へ絞ります。候補が多いまま同時に提示すると、色名や雰囲気だけの投票になりやすい。まず判断場面と比較軸を決め、明確に差がある案を残します。

Q3.レンダリング画像の色を、そのまま仕上げ色として指定できますか?

指定できません。モニター、テクスチャ、光源、露出、カラーマネジメントで表示は変わります。3Dは面積配分、組み合わせ、反射傾向を比較するために使い、最終色はメーカーサンプル、できれば大判サンプルを現地の昼夜で確認します。

Q4. 3Dパースだけで照明の明るさやグレアを判断できますか?

視界へ入る光源、反射、影、明暗の偏りを疑うことはできますが、照度やグレア性能の成立までは証明できません。器具の配光、光束、設置条件を照明資料や計算へ戻し、3Dで見つけた箇所を重点的に検証します。

Q5. Coohom以外でも同じ比較方法を使えますか?

使えます。SketchUp+Enscape、Vectorworks Renderworks、Twinmotionなどでも、固定視点やシーン/メディア設定を管理できれば同じ考え方を適用できます。ツールを替えるときは、カメラと光の設定が案ごとに引き継がれているかを確認します。

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·  家具3Dモデルを設計提案に使う|実商品データから見積・購入へつなぐ実務

参考資料

Coohom「【モデル素材】仕上げモデルとマテリアルを素早く置き換える」

https://www.coohom.com/jp/helpcenter

Coohom「3D表示でカメラ視点を保存する方法」

https://www.coohom.com/jp/helpcenter/3d表示でカメラ視点を保存する方法

Coohom「照明テンプレートの使い方」

https://www.coohom.com/jp/helpcenter/照明テンプレートの使い方

Coohom「カスタム照明を設定する方法」

https://www.coohom.com/jp/helpcenter/カスタム照明を設定する方法

Coohom「パノラマツアーの作成方法」

https://www.coohom.com/jp/helpcenter/パノラマツアーの作成方法

Twinmotion Documentation「Applying View Sets」:https://dev.epicgames.com/documentation/en-us/twinmotion/how-to-apply-view-sets-in-twinmotion

Twinmotion Documentation「Creating Images and Panoramas」:https://dev.epicgames.com/documentation/twinmotion/creating-images-and-panoramas

※画面構成、機能名、対応範囲はアップデートや利用環境により変わる場合があります。掲載画像には操作方法を示す別モデルの画面も含まれます。比較結果として扱うのは、同一モデル・同一家具・同一視点・同一出力条件を確認できる組み合わせに限ります。公開前に実機と最新の公式ヘルプで再確認してください。