吹き抜けをつくると、リビングの天井が高くなるだけでなく、家具の見え方、高窓とカーテンの納まり、照明器具の高さまでバランスが変わります。
図面で吹き抜けの範囲を決めたあと、一階の立位と座位、二階側の視点から3Dを見直し、家具サイズ、窓まわり、照明位置を順番に確認します。画面上で方向が固まったら、寸法は図面、建具や照明は製品仕様、温熱や設備はそれぞれの設計資料へ戻します。
導入:
吹き抜けのあるリビングは、パースにすると魅力が伝わりやすい空間です。
窓の上まで視線が伸び、階段の先に二階が見える。天井高のある一枚を見れば、「この開放感なら吹き抜けを入れたい」と感じるのも自然だと思います。
設計を進めていくと、少し違うところで迷い始めます。
ソファを置くと、思ったより小さく見える。サイズを上げると、今度は窓までの抜けが狭くなる。高窓はきれいに納まったものの、日射を抑えたいときに何を付けるかが決まっていない。長く吊った照明は一階から見るとちょうどよくても、二階へ上がるとかなり近い。
吹き抜けを入れたことで、室内の基準寸法が変わったわけではありません。それでも、同じ家具や器具の「見え方の基準」は確実に変わります。
今回は、実際にCoohom上で作成した二階建てLDKを使いながら、吹き抜けの高さに合わせて家具、窓、照明をどう詰めていくかを見ていきます。
1|吹き抜けに、何を求めているか
打合せで吹き抜けの話になると、「リビングを広く感じたい」「高い窓から光を入れたい」「一階と二階につながりがほしい」といった希望が出てきます。
似ているようで、設計上は少しずつ違います。
リビングの高さを感じたいなら、普段いる場所から上部空間がどの程度見えるかが気になります。光が目的なら、高窓の位置と室内のどこへ光が届くかを見たい。一二階のつながりを重視するなら、階段や吹き抜け縁から互いの階がどう見えるかが判断材料になります。
全部を同時に最大化しようとすると、吹き抜けの範囲も開口も大きくなりがちです。その分、二階床の使い方や窓まわり、照明、空調など検討する条件も増えていきます。
今回のモデルでは、まずリビングで過ごすときの高さ感を基準にします。そのうえで、高窓からの光と、階段を介した上下階の見え方を重ねていきます。
最初に目的を一つ置いておくと、あとで「吹き抜けをどこまで大きくするか」を考え直しやすくなります。
図1|吹き抜けで得たい「高さ・光・上下のつながり」を、同じモデル上で確認する
2|吹き抜けリビングは、座った位置から見る
吹き抜けを大きく見せたいなら、カメラを少し低くして上へ向ければ、かなり印象的な画面になります。
パースとしては成立します。ただ、リビングで長く過ごすのは、空間の中央に立って見上げている時間より、ソファや椅子に座っている時間の方が長い。
そこで、立位の画面を確認したあと、カメラを座位まで下げます。
今回のモデルでは、一階に立つと大開口、階段、吹き抜けが一つの視界に入ります。視線を上げれば二階方向まで続き、空間全体の高さは分かりやすい。
ソファ付近まで目線を下げると、見える比率が変わります。家具が視界の下側を占め、梁や上部開口がどこまで残るかがはっきりしてきます。
ここで高窓や二階の縁が自然に見えていれば、吹き抜けは座って過ごす時間にも効いています。反対に、立位では大きく見えた上部空間が座るとほとんど隠れるなら、吹き抜け全体の範囲をもう一度見る余地があります。
高さを何メートル取ったかという数字だけでは、この違いは拾いにくいところです。
私は吹き抜けを見るとき、完成パースの「一番きれいな位置」より、長くいる場所から何が見えるかを先に気にします。
高さと圧迫感そのものの確認はB5で扱っているので、ここでは吹き抜けが普段の視点にどのくらい現れているかに絞ります。
図2|L1-STDとL1-SITを並べ、立位と座位で上部空間の見え方を比較する
3|階段と吹き抜けが重なると、上下の視線が集中する
吹き抜けとリビング階段を近くに配置すると、空間の高さに人の動きが加わります。
一階から見ると、階段を上がる人の先に二階がある。二階へ上がれば、今度はリビングを見下ろす位置になります。
今回のモデルも、階段と吹き抜けが同じ側にあるため、上下階の視線がこの一帯へ集まっています。
一階だけを見ていると、階段はリビングの背景の一部です。二階側へ移ると、ソファやテーブル、高窓、照明まで一度に見えるようになり、一階で感じていた距離感とは少し印象が変わります。
「家族の気配がつながる」という言葉は便利ですが、実際にはどこまで見えるかが大切です。
二階の個室へ向かう途中もリビング全体が見えるのか。吹き抜け縁へ近づいたときだけ視線が交わるのか。階段の途中で照明器具が視界へ大きく入るのか。
3Dでは一階から見上げるだけで終わらせず、二階へカメラを移してもう一度見ます。
この図は構造断面の代わりにはなりません。上下階からどの範囲が見えるかを確認するための補助として使います。
図3|一階の見上げと二階の見下ろしを重ね、視線が集まる範囲を確認する
4|吹き抜けの家具|高さが変わると、家具の体量も変わって見える
吹き抜けをつくったあとに家具を入れると、普段なら十分大きく見えるソファが意外と軽く感じることがあります。
天井が高くなり、壁面の面積が増えたことで、家具の相対的な存在感が下がるからです。
そこで家具を大きくしたくなりますが、平面側の条件はそのままです。幅を広げれば通路へ近づき、奥行きを増やせば床の余白が減ります。
今回のモデルでは、同じソファを使い、高さ35インチは固定したまま平面サイズだけを変えました。
A案は長さ166インチ、幅108インチ。B案は長さ150インチ、幅87インチです。
A案は大きな吹き抜けに対してソファの存在感が出やすく、リビングの中心も分かりやすい。一方で、階段側から見える床面は減り、窓までの抜けも家具越しになります。
B案はソファ自体の存在感が少し抑えられます。その分、階段からリビング中央へ続く床面が残り、視線は家具より窓や吹き抜けへ向かいやすい。
今回確認したいのは「大きい方が高級に見えるか」ではありません。
リビングを家具中心の落ち着いた場所にしたいのか、階段・窓・吹き抜けまで連続した空間として見せたいのか。その違いで、選ぶサイズも変わります。
Coohomの公式ヘルプでは、通常の3Dモデルでサイズや配置高さを調整できるほか、対応するカスタムモデルでは設定済みの変数範囲で部材寸法や素材などを変更できると案内されています。利用できる調整項目はモデルによって異なるため、実際の属性パネルを見ながら比較します。
家具が物理的に置けるか、使用範囲が足りるかはB2へ戻します。この章では、吹き抜けの中で家具がどう見え、そのサイズ変更が床の余白へどう返ってくるかを見ています。
図4|ソファの平面サイズだけを変え、家具の体量と床の余白を同じ画角で比較する
5|吹き抜けの窓・カーテン|光を入れる場所と遮る場所を一緒に見る
吹き抜けに高窓を入れると、視線が自然に上へ伸びます。
今回のモデルでも、同じカメラ位置で上部開口を残した状態と閉じた状態を比べると、壁面の見え方がかなり変わります。
開口がある案では、上部の壁が途中で抜けるため、天井までの高さを感じやすい。閉じると大きな壁面が残り、空間は少し落ち着いて見えます。
ここで見ているのは、室内から受ける印象です。
高窓をつけたことでどの程度採光性能が変わるかは、方位、日時、庇、周辺建物、ガラスなど別の条件も関わります。詳しい採光検証はB6へ戻し、この章では吹き抜けの中で高窓がどこに見え、空間の高さへどう効いているかを確認します。
そして高窓を残すなら、カーテンやスクリーンも早めに考えたいところです。
高い窓は、完成パースでは何も付けない方がすっきり見えます。ただ、実際には日射を抑えたい時間があるかもしれません。視線を遮る必要が出ることもあります。
そのとき、スクリーンを窓枠内へ納めるのか、壁面側へ付けるのか。下ろした状態で大きな面として目立たないか。高い位置なので、操作と清掃をどうするかも残ります。
窓だけを先に決めると、こうした条件が後から追加されます。3D上では、対応するカーテンやスクリーンモデルを置き、室内からの大きさと位置関係を先に見ておくと納まりを考えやすくなります。製品の駆動方式や施工寸法は、採用候補が絞れた段階でメーカー資料へ戻します。
Coohomでは建具カスタムとしてドアや窓を扱う機能が用意されており、カスタムモデルは設定されたパラメータの範囲で調整できます。
高窓は、光を入れる場所を決めた時点で、必要になったときの遮り方まで考えておく方が後の手戻りを減らしやすい部分です。
図5|上部開口とカーテンの有無を並べ、光を入れる面と遮る方法を同じ視点で見る
6|吹き抜け照明|一階と二階から、器具の高さと光を見る
吹き抜けにシャンデリアやペンダントライトを入れると、縦方向の空間が分かりやすくなります。
器具そのものが一階と二階の間に浮くため、照明が吹き抜けのスケールをつなぐ役割を持つからです。
今回のモデルでは、吹き抜け中央にシャンデリアを置き、二階側から配置高さを調整しています。
一階から見たときには十分高い位置にあっても、二階の吹き抜け縁まで上がると距離が急に近くなります。器具を少し下げるだけでも、手すりや高窓との重なり方が変わります。
そのため、吊り高さは一階の完成パースだけでは決めません。
一階ではソファや階段に対して器具がどの高さに見えるかを見る。二階では人の目線に近すぎないか、高窓や手すりと重なって煩雑に見えないかを確認する。この往復をしてから位置を絞ります。
器具の位置が見えてきたら、夜の光も確認します。
今回提供されたレンダリング画面では、環境光のテンプレートとして夜間の設定を選び、同じカメラのままリビングを確認できます。Coohomの日本語ヘルプでは、照明テンプレートに昼間・夜間の環境が用意され、テンプレート適用後に室内照明と太陽光の明るさを調整できると案内されています。
細かな照明調整に入る前は、家具やカメラをそのままにして昼と夜を切り替えるだけでも十分参考になります。
昼は窓と吹き抜けが空間の中心に見えていたのに、夜になるとシャンデリアや壁面、階段まわりへ視線が移る。その変化を見れば、器具の高さだけでなく、夜のリビングで照明をどこまで主役にしたいかも考えやすい。
必要になれば、その後にリアルタイムレンダリングやマニュアルライトで細部を調整できます。Coohomの公式ヘルプでは、リアルタイムレンダリング上で光源位置や環境、カメラなどを調整できることが案内されています。
ここまで見ると、吹き抜け照明は「おしゃれなペンダントライトを選ぶ」という話だけでは済まないことがよく分かります。器具の高さ、一階と二階からの距離、夜の光までが一つの設計条件になります。
図6|二階からの吊り高さ確認と、夜間レンダリングでの光の見え方を同じ章で追う
7|後悔しやすいのは、空間だけ先に決めたとき
吹き抜けについて「後悔した」という話を考えるとき、空間そのものに問題がある場合ばかりとは限りません。
吹き抜けを決めたあとに家具を選び、高窓を決めたあとにカーテンを考え、最後に照明を入れる。工程が離れるほど、一つ前の判断へ戻りにくくなります。
ソファを置いたら思ったより空間が散って見える。高窓には満足したものの、スクリーンの納まりが気になる。シャンデリアを吊ったら二階側から近い。
こうした違和感は、3Dへ主要な要素を早めに入れるだけでも拾いやすくなります。
一方、画面で見ても判断できないことも残ります。
吹き抜けは上下階の空間がつながるため、温熱や空調については住宅全体の断熱・気密、窓、日射、暖冷房、換気などを合わせて確認する必要があります。国土交通省が公開している高断熱住宅の設計ガイドでも、断熱性能だけで完結させず、季節・方位・時間に応じた日射調整と、適切な暖冷房・換気設備を含めた設計が示されています。
シーリングファンも、3Dでできるのは主に大きさや高さ、梁・照明との位置関係を見るところまでです。空調上必要かどうかは設備条件から判断します。
高窓の清掃、カーテンの操作方法、照明器具の交換も同じです。画面で「高いから作業しにくそう」と気づくことはできますが、実際の維持管理方法は製品仕様や施工計画まで確認します。
吹き抜けをきれいに見せることより、完成後に困りそうな場所を設計中に拾う。3Dはこの使い方の方が、実務では効いてきます。
図7|音・温熱・シーリングファン・高窓清掃・照明メンテを「あとで効いてくる条件」として拾う
8|残す・縮める・やめる
家具、高窓、照明まで置いてみると、吹き抜けを「あり/なし」だけで考える必要がなくなります。
たとえば、ソファから見える範囲では高窓と上部空間が十分効いているのに、その奥まで大きく床を抜いても印象がほとんど変わらないことがあります。
その場合は、吹き抜けを少し縮めて二階床を戻す案も検討できます。
逆に、小さくすると座位から高窓が見えなくなり、照明も窮屈になるのであれば、現在の範囲を残す理由になります。
家具を極端に大きくしないと重心が整わない、照明器具が二階通路と近すぎる、高窓の遮蔽や維持管理が複雑になる。そうした条件が重なるなら、吹き抜けの位置や範囲そのものを見直した方が早いこともあります。
最後は、3D上の印象をそれぞれ正式な情報へ戻します。
対象 | 3Dで見たこと | 次に戻す場所 |
吹き抜け | 座位から感じる高さ、上下階の見え方 | 平面図・断面図 |
家具 | 体量、床の余白、階段・窓への抜け | 家具配置図・製品寸法 |
高窓 | 室内からの見え方、遮蔽物との関係 | 建具図・製品資料 |
照明 | 吊り高さ、上下階からの距離、昼夜の見え方 | 照明・電気図 |
温熱・設備 | 上下階が一体になる空間範囲 | 性能・設備検討 |
維持管理 | 高窓・照明へのアクセス | 製品仕様・施工計画 |
この表まで戻ると、「吹き抜けが好きだから残す」という判断から少し離れられます。
何が得られていて、そのために何を追加で設計する必要があるのか。
その釣り合いを見て、残す、縮める、位置を変える。場合によってはやめる。
吹き抜けの検討は、このくらいの余地を残しておいた方が進めやすいと思います。
図8|Gain / Added Conditions / Returnで、残す・縮める・やめるの判断をまとめる
まとめ
吹き抜けを入れた瞬間、空間の縦方向のスケールが大きく変わります。
すると、今まで普通に選んでいたソファが軽く見え、高窓にはカーテンやスクリーンの問題が加わり、照明は一階と二階の両方から見る必要が出てきます。
だから、吹き抜けだけを先に完成させない。
一階の立位と座位から高さを見る。二階へ上がって視線を確認する。ソファの寸法を動かし、高窓の見え方を比べ、照明を吊って昼夜を見る。
そこまで一度3Dに入れてから図面へ戻ると、吹き抜けを採用した理由もかなり具体的になります。
「開放感があるから」だけで終わらず、この家具、この窓、この照明まで含めて、この吹き抜けを残したい。
その状態まで確認できれば、吹き抜けはパースの見栄えだけに頼らない提案になります。
次のアクション
検討中の吹き抜けがあれば、現在の3Dへ主要なソファ、高窓、照明器具まで入れてみます。
最初は家具サイズだけ。次に高窓。最後に照明高さと夜の光環境。同じカメラを残しながら一つずつ動かすと、吹き抜けのどこが実際に空間へ効いているか追いやすくなります。
FAQ
吹き抜けリビングには大きなソファが合いますか?
吹き抜けでは家具が相対的に小さく見えることがありますが、サイズを上げれば必ず整うわけではありません。幅や奥行きが増えると、床の余白や階段、窓への視線も変わります。同じソファの寸法だけを動かし、座位と階段側から比べると判断しやすくなります。
吹き抜け照明の高さはどう決めますか?
一階からの見え方に加えて、二階通路や吹き抜け縁からの距離を確認します。ペンダントライトやシャンデリアは、吹き抜け高さだけで位置を決めると二階側で近く感じることがあります。位置を決めたあと、夜の光環境でも見直します。
吹き抜けの高窓にはカーテンが必要ですか?
方位、日射、視線、使い方によって変わります。必要になった場合に備え、カーテンやスクリーンをどこへ納めるか、どう操作するか、清掃できるかまで高窓と一緒に検討しておくと後の調整が減ります。
吹き抜けにシーリングファンは必要ですか?
住宅の断熱・気密、空調方式、吹き抜け形状などで条件が変わるため、一律には決められません。3Dでは器具径、高さ、梁や照明との位置関係を確認し、空気循環や設備上の必要性は性能・設備側で判断します。
参考資料
・国土交通省「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」